現状レポート

2018/09/01

取材第19回-1週目 豊橋平安寮[理事・施設長]中村 聡さん

学校をはじめ、地域の皆さまとの関係を大切にしながら、地域に根ざした施設を運営しています

豊橋平安寮[理事・施設長]中村 聡さん

heianryou_001_IMG_8297

豊橋平安寮は、社会福祉法人豊橋平安寮によって、運営されている児童養護施設です。昭和24年に開設、その後、昭和30年2月厚生大臣により社会福祉法人の認可を受けて以来、長きに渡り豊橋市・大崎の地で運営しています。
平成21年、施設の建て替えと共に、現在地へと移転しました。定員70名の大舎であり、平成に入って最後にできた大型施設です。現在、男女各2・幼児1の5つのユニットで構成されています。当施設では、明るさ・安らぎ・温もりがあり、大家族として集える「団らんのある家」をモットーに、子どもたちが家庭的な住環境で、安心と安らぎの中、家族のようにお互いにコミュニケーションを取りながら生活できる環境を整えています。

当施設の特徴として、地域の皆さまとの密接な関わりがあります。地域の皆さまが温かく受け入れてくださり、日頃から多くのご支援・ご協力をいただいています。中には、「戦後、食べるものに困った時、助けていただいた恩を返さないと…」と野菜を持ってきてくれるご年配の方や親族の方々、沢山釣れたからどうぞと魚を持ってきてくれる方もいらっしゃり、地域の皆さまも当施設の子どもたちを大切にしてくれています。
特に、学区の小学校の先生とは日頃から連絡を取り合い、子どもたちの情報を共有するのはもちろん、5月は当施設・10月は小学校を会場にした意見交換会と、食事会の開催を20年以上続けています。お互いに親睦を深めながら信頼できる関係性を作る事で、子どもたちにとって必要なケア・サポートを協力しながら行っています。
毎年12月に行うクリスマス会では、地元企業の皆さまにもご協力いただき、地域の皆さまにお越しいただいています。毎年500人を超える方々にご来場いただき、地域の皆さまに日頃の感謝を伝える機会となっています。また、施設内には、地域解放室を設け、子育てサークルなど地域の皆さまの活動の場としてもご利用いただいています。これからも、地域に根ざした開かれた施設でありたい、地域の皆さまとの交流を大切にしていきたいと考えています。

私がこの豊橋平安寮に就職したのは、昭和63年4月のことです。福祉の専門学校生としてボランティアで関わるうちに、お声をかけていただき、以来30余年、施設で暮らすこどもたちのサポートに携わっています。

私自身、始めは児童福祉に興味があったわけではなく、高校の頃は写真部に在籍し、将来は報道部で報道写真を撮りたいと思っていました。転機となったのは、高校2年生の秋のことでした。同じ写真部のクラスメイトが交通事故に遭い、植物状態になってしまったのです。「元のようには戻らないけれど、もしかしたら意識は戻るかも…」医者のその言葉を信じ、入院先の病院に行っては、彼に話しかけたり車椅子で散歩に連れていったりするボランティアをしていました。その時に医者や看護師の方々など多くの人と接していくうちに、これまでの自分の視野の狭さに気づき、もっと色々なことを勉強したいと担任の先生に相談したところ、「福祉の世界が向いているかも」と福祉の専門学校への進学を勧められ、福祉の道へと進んだのです。
学生時代には、児童福祉だけでなく、老人介護や障害者施設など様々な場所でボランティアを経験し、その中でも自分自身が楽しく、やりがいを持って取り組めると強く感じた児童福祉のを選ぶことになりました。

時々若いスタッフの子に「どうして30年も続けられたんですか?」「辞めたくなることはないんですか?」と聞かれることがあります。あらためて振り返ってみると、辞めたい思ったことも数えきれないくらいあるし、どれだけ自分の家族に負担をかけてきたことかと思います。さらに、自分がやっていることが正しいのかどうか、きちんと子どもに届いているのかどうかも、すぐには結果が出ないので、不安に思うことも多々ありました。でも子どもたちって、時々プレゼントをくれるんです。普段は嫌なことばかり言うし、全然言うこともきかないのに、こっちが大変な状況だと分かると、突然「ありがとう」って励ましの手紙をくれたりするんです。また、卒業生が遊びに来てくれた時に「自分が子育てをするようになって、先生に怒られたことや厳しくされたことの意味がよくわかりました」と話してくれた時、やっと今までやって来た事が間違えでは無かったという事に気づく事ができるんです。気長に構えて、子どもたちとの今の時間を大切にしていくようにして来たから、今まで続けてこれたのかなと思います。
これからも、ここを巣立っていった子たちが「ただいま」といつでも帰ってこれるように、地域の人の力をかりながら、スタッフの皆さまと共に「団らんのある家」を一緒に作っていきたいと思っています。

botan2

※掲載されている情報は、2018年7月現在の情報となります。

新着情報

BACK TOP