ニュース

【イベント報告】2026.10.10(土) 第2回 児童福祉の架け橋 講演会

「彼と私 ~孤立させない支援の形~」

施設養護の現状と当事者の声から考える、私たちにできること
2026年10月、NPO法人「児童福祉の架け橋」では、第2回講演会を開催しました。

今回は、児童養護施設「中日青葉学園」で長年子どもたちの養育に携わってこられた倉橋さんと、実際に児童養護施設で育ち、社会へ巣立った経験を持つ柴田さんをお迎えしました。「彼と私 ~孤立させない支援の形~」をテーマに、社会的養護の現状や課題、施設を退所した若者たちが抱える思いについて、支援する側と当事者、それぞれの立場からお話しいただきました。

施設を出た後も続く、孤独と不安

講演の前半では、倉橋さんから「社会的養護」の仕組みや児童養護施設の現状についてご説明いただきました。さまざまな事情によって親元で暮らすことが難しい子どもたちを、社会全体で守り育てる社会的養護。しかし、施設や里親家庭で暮らしていた子どもたちは、社会に出た途端、住まいや仕事、生活費、人間関係など、多くの課題に直面することがあります。特に深刻なのは、困ったときに相談できる相手がいないことです。施設での生活が終わっても、心の傷や不安がすぐに消えるわけではありません。社会に出てからも安心して頼れる人がいること、継続して寄り添う支援の大切さを学びました。

当事者の言葉が教えてくれたこと

講演の後半では、柴田さんがご自身のこれまでの人生を振り返りながら、率直な思いを語ってくださいました。施設を退所してから、仕事や人間関係に悩み、何度も転職を経験しながら、自分自身と向き合い続けてきた日々。「自分の問題は自分で解決するしかない」そう思いながら生きてきた柴田さんの言葉には、想像以上の孤独や葛藤が込められていました。20代は自分自身を守るために必死に生き、30代になってからは「どうしたら人を愛せるのか」「どうしたら自分自身を好きになれるのか」を考えるようになったといいます。
また、長年抱えてきた母親への思いについても語ってくださいました。そのお話は、家族の愛情や人とのつながりについて、私たち自身が改めて考えるきっかけとなりました。そして、柴田さんが語られた「一人で頑張るだけではなく、周りの人に頼ることも大切」という気づきが、とても印象に残っています。
支援とは、何かをしてあげることだけではない

今回の講演で特に心に残ったのは、倉橋さんが支援者として、これまでの関わりを振り返られた場面です。
子どもたちの不安や寂しさ、親への思いに十分向き合うことができていたのか。長年、子どもたちのために尽力してこられた方が、なお自らの支援を問い続ける姿に、深く考えさせられました。
一方、柴田さんにとっても、施設を出た後に倉橋さんとのつながりが続いていたことが、人生の大切な支えの一つになっていました。

支援とは、必ずしも特別なことをするだけではありません。
話を聞くこと、気にかけること、困ったときに声をかけられる関係をつくること。
そして何より、施設を出た後も、人とのつながりが途切れないこと。
その大切さを改めて実感しました。

私たち一人ひとりにできること

講演後の意見交換では、参加者から多くの感想や質問が寄せられました。当事者として同じような経験を語ってくださる方、支援に携わる方、経営者や専門職など、さまざまな立場から意見が交わされました。
「話を聞くだけでも力になれるのではないか」
「気軽に相談できる大人が一人でも増えることが大切」
「自分たちにもできることを考えていきたい」
こうした声が広がり、会場全体が温かな雰囲気に包まれました。


私たちNPO法人「児童福祉の架け橋」が目指しているのも、まさにこうした人と人とのつながりです。子どもたちが社会へ巣立った後も、一人で悩みを抱え込むことなく、誰かに頼り、安心して生きていける社会。
その実現に向けて、私たちにできることは決して大きなことばかりではありません。
まずは現状を知り、理解し、関心を持ち続けること。そして、出会いや交流の機会をつくり、一人でも多くの若者と社会をつないでいくことが大切だと感じました。


今回の講演会は、社会的養護について学ぶだけでなく、「人を支えるとはどういうことなのか」「私たちは誰かの人生にどう関わることができるのか」を考える、大変貴重な時間となりました。

NPO法人「児童福祉の架け橋」では、今後も講演会や交流会などを通じて、子どもたちや社会へ巣立った若者たちとのつながりを大切にしながら、活動を続けてまいります。

最後になりましたが、貴重な経験と思いをお話しいただいた倉橋さん、柴田さん、そしてご参加いただいた皆さまに、心より感謝申し上げます。

NPO法人 児童福祉の架け橋 下野