現状レポート

取材第49回-3週目 自立援助ホーム いと[ホーム長]野沢 真紀さん

「明日の暮らしにつながる力を、日々の営みから育む。こどもたちの『歩む力』を適切な距離から支える自立援助ホームの役割」

自立援助ホーム いと[ホーム長]野沢 真紀さん(のざわ まきさん)

当ホームは令和5年4月に開所した自立援助ホームです。私自身は令和7年4月にホーム長として入職しました。これまでは予備校講師を皮切りに、家庭訪問による学習・生活スキル支援、役所での女性相談支援員、学校でのソーシャルワーカーなど、様々な形で相談や支援の仕事に携わってきました。 中でも女性相談の業務に携わったことをきっかけに、福祉を体系的に学ぶ必要性を強く感じ、通信制大学に編入したのが13年前のことです。これまでの仕事や市民活動の経験は、今の仕事の糧(かて)になっているのだと、あらためて実感しています。

対人援助では、無意識に自分の考えを投影してしまう危うさがあります。だからこそ、こちらが先回りして結論へ導くのではなく、適切な間合いを探りながら関係を深めていくプロセスに、この仕事の確かな意義を感じています。

そのため、こどもたちとの距離感に一律の枠組みは設けていません。役割としての境界線を意識しつつも、一人ひとりの現在地や状況に応じた「援助の視点」から、その都度最適な関わり方を柔軟に選択することを大切にしています。 あらかじめ固定された枠を作らないからこそ、こどもたちも生活の中で「ほどよい人間関係」を試行錯誤することができます。この場所での経験を通じ、自分なりの安心できる距離感を掴み、対人関係の幅を広げ、厚みを持たせていくことを期待しています。

先日、母の日にホームのこどもたちからカーネーションを受け取りました。ホームの大人全員への感謝が込められたそのプレゼントもさることながら、印象的だったのはそのプロセスです。誰か一人の思いつきではなく、こどもたち同士で相談し、合意形成をして繋がったという事実に、生活の場を通じた確かな人間関係の広がりと成長を実感しています。

また、ホーム長に着任して以来、多くの方々から様々なご寄贈をいただいていることに深く感謝しています。届いた品々にこどもたちが見せる新鮮な喜びの瞬間は、大変印象的です。 これまでの環境から周囲の大人に慎重な子もいますが、物品を通じて寄贈者の方々の存在や想いを少しずつ伝えていけたらと考えています。そうした見えない応援に触れる経験こそが、彼らの未来への豊かな種まきとなり、将来の歩みを支える力になると信じています。

近年、「社会的養護」への関心は高まりつつありますが、「自立援助ホーム」の役割はまだ広く知られていない現状があります。こうした場所の存在が、社会の共通認識として少しずつ浸透していくことを願っています。 生い立ちや現状を説明することに過度なエネルギーを費やさずとも、だれもがごく普通に受け入れられるよう、まずは私たちから理解の土壌を耕していきたいと考えています。こどもたちが自ら人生を切り開いていこうとする歩みを、適切な距離感から後押ししてくれる存在が社会全体に、そしてこの記事を通じて繋がった皆さまの間に広がっていくことを、切に願っています。

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※掲載されている情報は、2026年6月現在の情報となります。