現状レポート

2017/01/01

自立援助ホーム 『ohanaの家』 ホーム長 味岡和子さんのインタビュー

ohanaの家 ホーム長 味岡和子さん

ajiokasan_img_6605 Q.ohanaの家ってどんな場所ですか?
岐阜県羽島市にある自立援助ホームで、児童養護施設等を退所した自立困難な子どもたちや、家庭の事情により行き場を失い一人で生活していかなければならない、義務教育を修了した15歳から20歳未満の子どもたちが入所しています。子供たち自らが働くことにより、自立して社会に巣立つことを支える家です。定員は女性12名。自立援助ホームの中では定員が多く、現在、岐阜県内外の子どもたち12名を受入れしています。ohanaの家では理事長の方針で、社会的養護の中でもなるべく受皿が少ない子どもたちの受入をおこなってます。他県からの要請もあり、どうしても定員が一杯などの特別な理由が無い限り頼まれた子どもは受入をしています。もちろん大変な事も多いですが、手がかかる子どもの方が結びつきが強くなり可愛いものです。多くの子どもたちが1年半ぐらいで自立してみんな笑顔で巣立っていきます。

Q.ohanaの家で力を入れている事は何ですか?
自立に向けての生活ですから色々ありますが、特に食事には力を入れています。子どもたちの年齢は、高校へ通う子どもたちと同じぐらいの年齢です。複雑な家庭環境で育った子どもが多く、今まできちんとした食事を摂れていない子もいます。ですからohanaの家では、しっかりした家庭の料理を食べてもらえるように、一汁三菜を基本にして食事を作っています。例えば、餃子、シューマイなども手作りで、食事担当のスタッフが丁寧に1から作ります。希望があれば、レシピを用意してあげたり、 作り方も教えています。「ここまで手間ひまかけて料理を作っている所は、他には無いよ」といつも子どもたちには話をしています。子どもたちも、この事が分かるようになると、自分たちがどれだけ大切にされているかが分かりますよね。だからみんな、ohanaの食事は最高って言ってくれるんです。ohanaの食事を携帯で撮ってくれていた子どもがいて、 その写真を集めて、「ohanaの食卓」という写真集まで作りました。

Q.ohanaの家での生活にルールはありますか?
基本的なルールはたくさんありますが、私が特に大切にしているルールが2つあります。
1つ目はきちんと働く事。「働かざる者食うべからず」です。施設に来たら3日以内に必ず就業してもらうようにしています。就職先がすぐに見つからない子どもたちは、ohanaの家と同じ運営母体の施設を紹介して、そこで働く事もあります。そしてきちんとお金を貯めて、自立に向けた生活をしています。
2つ目は門限の10時までには必ず帰ってくる事です。実は以前、こんな事がありました。
ある子が、毎日夜10時に彼氏に送ってもらって帰ってくるのですが、いつも泣いて帰ってくるんです。あまり毎日のように泣いて帰ってくるので、ある日彼を問いつめてみようと思って直接聞いてみたんです。すると、彼は「夜10時の門限があるので、それまでに絶対帰らせなくてはという事で、いつも言いあいになって泣かしてしまうんです。」と教えてくれました。それを聞いた時、安心したとともに、素敵な彼氏に出会えてよかったね。と思いました。

Q.彼氏をつくる事はOKなんですね?
もちろんOKです。彼氏を決める時の条件もよく話してます。条件は2つ。どんな仕事でもいいのでしっかり働く人。それと、あなたを一番大切にしてくれる人。そんな彼氏が出来たら必ず紹介してねと、いつも子どもたちには伝えています。ある日、施設を出た子と話をしていた時にこんな話を聞きました。私がいつも仕事から帰る時、みんなに「おやすみ。また明日ね」と声をかけて帰っていたんですが、その子はそれがとてもつらかったそうです。私たちには帰る場所が無いけど、ohanaの職員の人達は、帰る場所があっていいなといつも思っていたそうです。その話を聞いてからは、場の雰囲気を読んでみんなに話かけたり、帰宅するようになりました。私たちが本当に心から発した言葉でないと意味が無いし、伝わらないという事もよくわかりました。
その時彼女に「私たちに一番必要なものは何か分かる?」と聞かれました。それは、彼氏や夫のようにいつも一緒にいられる存在だそうです。女友達や相談できる友達はいる。でも本当に寂しいときに一緒に寄り添ってくれる存在は彼氏か 旦那さんしかいない。ohanaの家に住む子どもたちは、帰れる場所がある子はほとんどいない。だから安心して帰れる場所を求めているんです。

Q.ohanaの家をやっていて心に残るエピソードはありますか?
毎日が勉強の日々なので色々な事が起こります。例えば5年前、ohanaの家を始めた当初に10日間で3回の集団脱走をした子どもたちがいました。当時ohanaの家には社会的養護にずっと関わっていたスタッフが、私だけしかいない状況でした。私は、集団脱走をした子どもたちを警察まで迎えに行きましたが、叱らなかったんです。するとまた翌日同じように脱走をしました。それを3度ぐらい繰り返した時に、その中のリーダーの子が、「なぜ味岡さんは叱らないの」と聞いてきました。私は、「だって、あなたたちには帰る場所が無いでしょ。どうしたってあなたたちを守っていかなければならない。だから覚悟はしているよ」と伝えました。すると数日後、本当の理由を自分から話してくれたんです。
このような行動は、私たちがどこまで自分達を守ってくれるのかという試し行動なんです。
子どもたちは叱られそうになると、叱られる前に必ずその答えを用意します。でも作られた理由を聞いても、本当の解決にはならないんです。一般的には、悪い事をしたらすぐ叱ると思うんですけど、ohanaの家の子どもたちにはあてはまらないんですよ。

Q.施設を出てからの交流はあるんですか?
5年間で、34人の子どもたちがohanaの家を巣立って行きました。今でもほとんどの子どもたちと繋がっています。 施設を巣立って行く時には、その子の生活にあった環境を考えて、スタッフみんなで住む場所を選びます。施設の近くでアパートを借りて一人暮らしをしている子は、仕事が早く終わったときなどによく顔を出してくれます。成人式には、着付けをして写真を撮っています。それは私たちとっても、とてもうれしい瞬間です。
また行事としては、年に1回、8月の第1土曜日に施設の中庭でバーベキューをおこないます。みんな気にかけているためか、その時期にメールすると3時間ぐらいで出欠の連絡がとれるんです。もちろん家族、彼氏なども連れてくるので、50名以上の集まりになり、とても楽しいです。
巣立っていった34人のうち14人が結婚しているんですが、実は1組しか結婚式をあげていません。若いカップルが多いので、毎月の生活が大変なご夫婦も多く、施設を出た後の事はとても気になります。ohanaの家は2年ほど前に県のアフターケアの事業を委託されましたので、今ではohanaの家を出た子どもたちの必要に合わせてアフターケアが出来るようになりました。

Q.最後にohanaの家のみなさまに喜ばれる事は何かありますか?
ohanaの家の子どもたちは、風邪をひいても、けがをしても病院に行こうとしないんです。もちろん国民健康保険には入って保険証もあるのですが、3割負担ですよね。 自立にむけて、お金を貯めている、16・17歳の子どもたちにとって、医療費ってかなり高いんですよね。だから何かあっても病院に行こうとしないんです。インフルエンザなどにかかった時はどは、病院に連れて行くのですが、その時もかなり恨まれます。本当は、そういう時ぐらい支払ってあげたいなという気持ちになるんですが、みんなが平等の暮らしをしているので、その子だけ特別扱いはできず、非常につらいです。だからohanaの家では、色々な病気に備えて多くの常備薬を揃えています。でも、みんなが使うので、すぐに少なくなってしまいます。薬代がとてもかかっているんです。ですから薬などを含めた消耗品などの支援があると助かりますね。

※掲載されている情報は、2016年9月現在の情報となります。

【ohanaの家に支援をしたい方】

◎支援品等を送りたい方は
児童福祉の架け橋右上の「お問い合わせ」の中から「サポートセンター事務局」を選択し
事前に必ずご連絡をお願い致します。

◎ohana基金へのお申込は
(1)賛助会員 個人3,000円/1口 団体10,000円/1口 ※何口でもOKです。
(2)寄付金  金額に定めはありません。
   振込先 銀行名/大垣共立銀行 支店名/羽島支店 普通 1126391  
       口座名義/社会福祉法人岐阜羽島ボランティア協会
  ※お振込の前に児童福祉の架け橋右上の「お問い合わせ」の中から「サポートセンター事務局」を選択し事前に必ずご連絡をお願い致します。

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