現状レポート

2025/09/01

取材第45回-1週目 自立援助ホーム 陽和ハウス[ホーム長]小林 雅弥さん

ホーム長として目指すのは、子どもファーストな家庭的な雰囲気。いつか「ここにいてよかった」と思ってほしい。

自立援助ホーム 陽和ハウス[ホーム長]小林 雅弥(こばやし まさや)さん

新卒で少年院の法務教官として約5年間働き、転職して児童養護施設で3年間働きました。その後陽和ハウスの児童指導員になり、ホーム長になったのは2025年4月からです。

少年院で働いていた頃、子どもから「先生みたいな大人の人ともっと早く出会いたかった」と言われた事がありました。この子には早くこのような出会いがあれば、大人に頼る事ができ、少年院に入る事もなかったのではと考えました。早い段階で、辛い経験をした子やちゃんとした教育を受けられなかった子に関わりたいと思い、転職しました。

陽和ハウスは2024年にできた場所です。理事長や事務局の方針として家庭的な雰囲気を大切にしています。ルールはありますが、一人ひとりの考え方や状況に寄り添い、家庭のように話し合って解決したり、何をすべきか考えて支援したりしています。大人が指導するというのではなく、自分の子どもを相手にするようなイメージで関わっています。

私がホーム長になったのは2025年4月です。施設全体を常に見渡し、何が必要か考えながら仕事をしています。ですが、子どもと接している時が一番楽しいです。子どもが大好きなので、子どもと接する機会がもっと欲しいですね。ホーム全体として、子どもファーストでありたいです。事務作業などをしていても、子どもが帰ってきたり出かけたりする際には手を止めて、子どもと対話するようにしています。そういった部分から子どもの支援は始まるのではないでしょうか。

子どもと関わっていると、これまでとても苦しんできたのだと感じる事があります。大人を信用できるような環境にいなかった子どももいます。このホームを「ここで暮らして良いんだ」「衣食住が整っていて、安全な場所だ」と思えるような環境にして、まずは安心して生活をしてもらうところから始めたいです。安心がないと、社会に出て働くイメージが持てないのは当たり前だと思います。日々の対話を重ねながらも、働く事をせかすのではなく「この仕事ならやってみたい」と自然に思えるようなタイミングを待って、その子に応じたタイミングで情報提供を行う事で一緒に頑張りたいです。

以前、子どもからとても傷つくような言動を受けた事があります。彼はほかの職員と比べても、自分に心を開いてくれていると感じていたのですが…これまできちんと教育を受けられず、周囲との人間関係を築くのが苦手な子でした。その出来事から彼との距離を遠く感じるようになりましたが、理事長を通して「とても傷ついている」と伝えてもらいました。それをきっかけに、信頼していた大人を自分が傷つけてしまったことについてよく考えてくれたそうです。後日、謝罪したいと言われ、本音で話し合う事ができるようになりました。その後、その子は働きに行けるようにもなり、変化や成長が見られて良かったです。お互いにとって貴重な経験となりました。

児童指導員のように子どもと関わったり支援したりする側は、子どもにすぐ変化を求めてしまう傾向があると思います。自分の支援に対して、すぐに変化があるだろうと考えてしまいがちです。しかし子どもたちにも今まで満たされなかった経験や、タイミングがあります。うまくいかない原因をしっかりと考えて、遠回りだと思えても、子どもに対して時間をかけてケアをする事が大切です。辛い経験をしてきた子どもだからこそ大切だと思います。当ホームに来たからにはさまざまな学びと経験を得られるように、寄り添っていきたいです。いつか「この人と出会ってよかった」「ここにいてよかった」と思ってもらえたら良いですね。

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※掲載されている情報は、2025年8月現在の情報となります。

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