現状レポート

2024/12/01

取材第42回-1週目 ファミリーホーム ゆりちゃんハウス[責任者]百合草 澄子 さん

里親からファミリーホームへ。「家庭養育」を根底に、自然豊かな環境で子どもの思いやりの心を育んでいます

ファミリーホーム ゆりちゃんハウス[責任者]百合草 澄子 さん(ゆりくさ すみこ さん)


私は愛にあふれる家庭の4人きょうだいの長女として育ちましたが、10代で両親を亡くしました。まだまだ児童福祉の制度が行き届いていない時代で、複数のアルバイトを掛け持ちしながら高校へ通い、心だけは貧しくならないように、きょうだいで手を取り合って暮らしました。

大人になると、メディアで子どもの虐待や育児放棄など悲しいニュースばかり耳にするようになり心を痛めました。「自分にも何かできないか」と思い、里親になったのです。すぐに里子を受け入れましたが、その子は重複障がいを持っていました。日々大変でしたが、ほうってはおけず、里親の先輩や病院の先生に話を聞き、さまざまな人に助けてもらいながら里親を続けてきました。しかし、里子が増えるにつれ資金面での課題を抱えるようになりました。普通の家庭のように子どもたちが希望することを叶えてあげるには、たくさんのお金がかかるため思うように支援ができない。そこでファミリーホームへ移行し、受け入れできる子どもへの間口を広げると同時に、補助員や近隣の福祉大学で学ぶ学生さんにもかかわっていただき、体制を整えることにしました。子どもは塾や習い事に通えるようになり、たくさんの物品もいただけるようになってとても感謝しています。このような支援をとおして、子どもが希望を持てるよう、感謝の気持ちをいつも心の隅においておけるようお話ししています。

ゆりちゃんハウスは療育手帳を持つ子を含む、12人が暮らすファミリーホームです。子どもの定員は6名ですが、現在は5名の子どもが暮らしていて、場合によっては一時保護の必要な子を預かることもあります。厚生労働省では、ファミリーホームは施設ではなく、家庭という位置づけがされています。そのため、根底には家庭養育があります。門限はありますが、いつでも家に出入りができる状態にし、一般家庭のように自由な雰囲気です。毎日朝4時に起きてお弁当を作り、誕生日会でその子の成長を祝います。24時間365日ずっと子どものことを考え、一緒に過ごし、ちょっとした変化にも気づけるのです。私も弱さを見せてしまうこともありますが、それも家庭養育だからこそだと思います。助け合いや支え合いの精神を学べます。
子どもがいつか自立し、家庭を築く際、モデルとなる家庭像が必要です。ここで育った経験をもとに、自分のスタイルで温かい家庭を築いてもらいたいです。

ゆりちゃんハウスでは、子どもの健康や食を一番大切にしています。肉が好きで野菜が嫌いな子どもも多いですが、野菜をおいしく食べてもらえるよう近くのビニールハウスで種植えから収穫までを一緒に挑戦し、食育に生かしています。自然豊かな環境にあるからこそできることです。収穫した野菜でジュースやおやつ、お味噌を手作りして…食は人なりという言葉のとおり、自分で育てた野菜を食べることで子どもも穏やかに育っていくと感じています。
巣立った子どもたちには、いつでも帰ってきてもらいたいと思います。先日も、自立した子が何の連絡もなく突然ごはんを食べに来ました。家庭として、いつでも帰って来られる場所でありたいです。

児童福祉の架け橋をとおして、たくさんの方が子どもたちを見守ってくださっているのを感じています。以前、子どもの成長にあわせて必要なものを個人的に送ってくださった方がいました。身体の成長にあわせたサイズの異なるおむつやスタイなど、成長を見守ってくださっているのを感じられるものばかり。乳児なのでまだ理解できていない年齢ですが、支援をとおして「あなたを想ってくださる人が私たちの他にも、たくさんいてくれるんだよ」と言い聞かせています。支援には感謝しきれないほどです。

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※掲載されている情報は、2024年9月現在の情報となります。

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