現状レポート

2023/05/12

取材第31回-3週目 児童養護施設 名古屋文化キンダーホルト [施設長]岩田正人さん

子どもたちにふさわしい施設であるために、地域社会の力を必要としています

児童養護施設名古屋文化キンダーホルト [施設長] 岩田 正人さん

「キンダーホルト」は子どもの定員が42名の児童養護施設です。長久手市にある本館は30名、尾張旭市にある「フォワイエ」と瀬戸市にある「ログ・カメリアの丘」の地域小規模児童養護施設は各6名ずつが定員です。スタッフの支援体制はグループ担当制をとっています。スタッフを担当制にする事で、子どもたちにとって頼れる大人を明確にしています。

当施設は1985年設立です。私は約23年前から勤めはじめ、幼児グループや学童グループ、個別対応職員、基幹的職員、総務など全体の職務を経て、2020年に施設長となりました。ずっと現場にいましたし、子どもと直接かかわりを持てるのが職員としてのやりがいでしたが、施設長としてスタッフが自己実現を目指すことのできる環境、子どもが笑顔でいられる環境を作れるならと、現在は社会的養護の使命感と責任を持って取り組んでいます。

施設の理念は「うまれてきてよかった」です。設立当初はこのような理念はありませんでしたが、8年程前にスタッフで話し合って作りました。当施設には、自己肯定感が低い子もいます。ありのままが受け止められたり、失敗することを受け止められたりして、自分の成長に集中することが出発点ではないかという結論になったのです。ですから、当施設での暮らしと大人との関係性を通して、少しずつでも「うまれてきてよかった」と思えるようにしたいです。また、誰もが分かりやすいよう、すべてひらがなで表現しました。

当施設の特徴のひとつは、スタッフと子どもの関係性です。スタッフは先生ではなく、あだ名や名前で呼ばれています。家庭に代わる生活の場であるため、先生と呼ぶのはふさわしくないと考えてます。先生と呼ばれると大人は知らず知らず偉ぶってしまいます。使う言葉も指導ではなく、支援のほうがふさわしいと考えています。

仕事を通して、私は毎日のようにやりがいを感じています。一番の喜びは、子どもの成長を感じるとき。例えば先日、幼稚園を卒業した子が「これでお兄ちゃんと一緒に小学校に行ける!」と喜んでいました。きょうだいで施設に入所しており、今までお兄ちゃんと一緒に通学できなかったのが寂しかったのだと思います。そのような思いを抱えながらも成長してきた姿が、とても喜ばしかったですね。日常にこのような微笑ましい風景がたくさん転がっています。家庭に代わる生活の場だからこその風景ではないでしょうか。

これまでに卒園した子は、のべ500名はいると思います。全員ではないものの、連絡をとり続けたり食事会をしたりして、卒園後も子どもたちとかかわり続けています。特別なイベントがなくても、遊びにきてもらうのは大歓迎です。中には施設のために、卒園後もイベントに協力してくれる子もいて嬉しいですね。

子どもにふさわしい場所になるには、当施設の努力だけでなく、施設をとりまく地域社会の力が必要です。その地域社会と子どもたちの関わりをどのように作っていくかが課題になると感じています。まずは、当施設で暮らす子どもたちの生活の様子を、もっと知っていただく機会が増やせればと思います。そして、社会的養護に関しての理解を深めていただけることが一番うれしいです。

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※掲載されている情報は、2023年3月現在の情報となります。

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