現状レポート

2024/03/15

取材第35回-1週目 児童養護施設 蒲生会大和荘[施設長]北川原 伸治さん

今まで続けてこられたのは、子どもたちのおかげ。今後は施設長として恩返しをしたい

児童福祉施設 蒲生会大和荘[施設長]北川原 伸治(きたがわら しんじ)さん

当施設は、かつて戦争孤児が暮らしていた名広愛児園のための開墾農場だった歴史があります。食べ物に困っている子どもを助けるところからスタートした施設のため、最低限、衣食住には困らない場にしたい。受け入れる子どもを選ぶような事はしません。一時保護の依頼もよく来ますが、出来る限り受け入れる体制をとっています。

私はもともと体育教員の仕事をしていましたが、児童指導員の任用資格があったため、29年前から当施設で働き始めました。2年前から施設長として働いていますが、今でも自分から子どもたちと関わりを持つよう意識しています。
以前からどの子にも平等に関わろうと意識し、子どもたち全員に一日一回は声をかける事を心がけていました。中には自己肯定感が低い子もいましたが、他の子どもと同じように関われば、良い方向へと変わってくれるのではないかと思いながら。どの子にも声をかける事を意識していたからか、施設長になった今も、子どものほうから声をかけてくれるようになりました。子どもと関わる事が楽しいので、今でも宿直業務をし子どもたちの相談にのったり、ソフトボールチームの総監督を引き受けたりもしています。

退所した子どもたちの事は、やはり忘れられません。関わり方が難しいと感じていた子ほど、退所してからも施設を訪ねてくれるような気がします。どの子にも平等に関わってきた事が誇りです。当施設での経験を引け目に感じる事なく、胸を張って生きて行けるように、子どもを送り出したい。今後も子どもたちにとって、できるだけ居心地のよい場所でありたいです。
理想や理論ではなく、人は人を育てるものだと日々感じています。子どもと職員との関係だけではなく、子ども同士でもそう。施設に入ったばかりの子に対して、他の子が見守り、教えて、お互いに育て合っている姿を見るとそう思います。だからこそ、職員には学校で学んだことを単に活かそうと考えるのではなく、日々の子どもたちとの生活から学ぶという姿勢が必要だと伝えたいです。

29年、ここで働き続けられたのは子どもたちのおかげだと思っています。当初は児童福祉に対する知識はありませんでしたが、ここで暮らす子どもたちを見て「やってみたい」と感じ、子どもたちからも学ばせて頂くという思いで一生懸命続けてきました。この仕事を始めてまだ数年という時期に、とある子が「先生たちはいいよね、いつでも辞められるから。私たちは、児童養護施設の子を辞めたくても辞められないんだよ」と言われました。この言葉が今でも忘れられません。それからは何かあっても、仕事を辞めたいと考えるよりも、どのように続けていくか考えるほうが有益だと思うようになりました。子どもたちへの恩返しになればと思い、施設長の役割も引き受けました。
職員は宿直業務等もあり仕事は大変だと感じる事もあるとは思いますが、子どもたちへの思いをしっかりと持って、関わってほしいですね。私のように児童福祉の知識や経験がない人にも、児童養護の世界で働いていただけるよう門戸を広く開きたいです。

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※掲載されている情報は、2024年2月現在の情報となります。

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