現状レポート

2016/05/01

第6回 中日青葉学園(わかば館)

子どもたち一人一人に合ったサポートをすることで、家庭復帰や社会での自立を目指します!

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中日青葉学園 わかば館[副学園長・わかば館館長]近藤 日出夫さん

中日青葉学園 わかば館 わかば館館長・副学園長 近藤日出夫  社会福祉法人中日新聞社会事業団が運営する児童心理治療施設のわかば館は、平成15年10月に開設。児童養護施設あおば館が併設されている複合型施設です。
もえぎ(男子のホーム)、あさぎ(女子のホーム)の2つのホームで、設立の目的である、入所児童の多様化に伴う専門施設の構築を踏まえ、あおば館と地域ネットワークとの連携を活かした運営を行っています。
わかば館に入所している児童は、発達障害といわれる、自閉症、学習障害、AD(注意障害)HD(多動性障害)や被虐待体験を抱えた子どもたちです。子どもたちの多くは、自身でも“生きづらさ”を感じている場合がほとんどです。また、将来に対して多くの不安を抱えています。だからこそ、私たち大人が子どもたちに安心感や希望を与えていくことが大切なのです。
わかば館では、子どもたちが抱える課題や問題を理解し、子どもたちが自分のとるべき行動を理解できるように環境を整えることや、状況に応じて適切な行動をとることができるように、人との接し方や社会のルール・マナーを身に付ける支援を医療機関と連携しながら進めています。

<館長自身も児童養護施設で育った事を伺い、施設での経験をお話を頂きました。>
家庭の事情で10歳の頃から、この中日青葉学園で育ちました。高校を卒業後、施設の手伝いをしながら夜間大学に通い、児童福祉の道に進むことを選び、以来45年間児童福祉に携わっています。私が今、こうしていられるのも、社会的養護があったから。この中日青葉学園で育ったことを、誇りに思っています。
私は、子どもたちの良い所を見つけた時はどんな小さなことでも褒めるようにしています。そして、今を一生懸命生きていれば、きっと良い出会いがある事を子どもたちに伝えたい。小学校6年生の頃、施設に来てくれた腹話術師さんが自分に夢を与えてくれた。腹話術を通して子供たちにも同じように何かを大切なものを感じ取ってほしいと思い、私も習い始めました。これからはこの腹話術を通して、子供たちに夢や希望を与えていきたいと思います。

wakaba007_IMG_4419左:沢山のトロフィーや盾は、子どもたちの努力の証
中:中日青葉学園(わかば館、あおば館共通)の玄関
右:静養室。定期的に、地域の医師による診察があります。

中日青葉学園 わかば館[臨床心理士]岡部 匡俊さん

中日青葉学園 わかば館 臨床心理士 岡部匡俊さん ★子どもたちのためになる経験をたくさん作ってあげたい!
平成15年10月の施設立ち上げ時から、中日青葉学園に勤務しています。高校の先生のすすめで入ったコミュニケーション学科で、児童福祉施設のボランティアに行った事がきっかけでこの仕事を知り、その後本格的に児童養護の仕事に携わろうと大学院へ進学して勉強しました。今の仕事の内容は、心理面接や心理検査を実施する事で生活指導の先生と相談しながら、その結果を生活に活かせるよう指導したり、自分自身も子どもたちの生活場面に入り、宿直などを行う事で子どもたちに寄り添いながらの指導を行なっています。
人はどうしても「違い」に目がいきがちです。でも色々と違いがあっても、人として共通点がある。色んなことをする子どもがいるけれど、自分にもそういう一面もあるんじゃないか?と常に深く考え、子どもたちの抱える問題を他人事にせず、自分に置き換えて考えるようにしています。
子どもたちには、自らの体験を通じて成長して欲しいので、様々なことを体験して欲しいです。今、わかば館では「レゴ」が人気です。はじめは、自分のレゴで一人遊びをしている子がいたのですが、施設でもレゴを用意したところ、次第にみんなで協力して遊ぶようになりました。誰かが建物を作れば、そこに遊びにいく子どもが現れたり、飛行機を作って一緒に旅行するなど…。
調べてみたら「レゴ」には学習や研究発表の場として“ロボット競技会”というのがある事が分かりました。予選大会、日本大会、さらには世界大会もあるようで、テーマにあった作品作りやプログラミングなどを競います。少しハードルの高さは気になりますが、子どもたちがみんなで参加出来ればいいなと考えています。協力し努力すれば、結果が出るんだという経験をして欲しい。子どもたちには興味のあることを通じて成長して欲しいですね。
子どもたちの描いた夢を出来るだけ叶えてあげたい。それが子どもたちそれぞれの将来に繋がるように、サポートしていきたいと思っています。

中日青葉学園 わかば館[児童指導員]大島 昭範さん

中日青葉学園 わかば館 児童指導員 大島 昭範さん ★時には厳しく。時にはやさしく。メリハリある行動で子どもたちを導いていきたい!
子どもたちの生活全般の指導や生活のサポート、いわゆる「親がわり」をしています。
福祉関連の大学を卒業してから新卒で中日青葉学園に入り、はじめは児童養護施設の「あおば館」で3年勤務し、4年目からは「わかば館」で勤務をしています。
家族を自宅で介護していた経験があり、大学1年生でホームヘルパーの資格を取得。3年生で高齢者施設を経験しました。その後、まだ経験のない世界を見てみようと実習先に児童福祉施設を選び、その実習がきっかけとなって児童福祉の道へ進みました。
「わかば館」の子どもたちは、自分自身が体験したことがない世界で生きている子どもたちなので、100%理解することが難しい。それを申し訳ないと思うこともあります。だからこそ、この施設から社会に出た時に、その子たちが困らないようにしたい。きちんと社会で暮らしていくためのルールやマナー、常識を身につけれるようにサポートしています。
子どもたちは、感情表現の苦手な子が多く、思っていることを素直に伝えられない。例えば、甘えたい時に甘えられない子も多いです。どうしてもその子の持つ「苦手」な部分が目立ってしまい、日常生活に支障が出てしまうこともあります。だからこそ、子どもたちには自分の持っている「苦手」への対応法を学んでいって欲しいなと思っています。
4月から、もえぎのホーム長となり、子どもたちのサポートに加え、中堅の立場として新人スタッフの指導も始まります。一緒に働くスタッフが困った時に助けをさしのべることが出来る職員でありたい。また子どもたちには「大島先生は怒ると怖いけど、一緒にいると楽しいし安心ができる。」と思ってもらえるように、メリハリのある指導をしながら子どもたちと向き合っていきたいです。

中日青葉学園 わかば館[保育士]村野 知世さん

中日青葉学園 わかば館 保育士 村野知世さん ★さまざまな生きずらさを抱えた子どもたちがいるという事をより多くの方に知ってほしい!
中日青葉学園に入って、今年の4月で9年目となりました。主な仕事は、子どもたちの生活のサポートです。ひとりひとりの子どもたちが生活しやすいように気を配り、安心、安全を守っています。
私が保育士を志したきっかけは、保育園の時にとても仲良く遊んでいた友達がダウン症だったからです。「なぜ、この子は皆と違うんだろう?」と興味深く思っていました。保育園の頃のことを思い出すと、その子とばかり遊んていた記憶が色濃く残っています。私を引きつける何かをその子は持っていたんだと思います。高校になって進路を決める時、おじいちゃんおばあちゃんや小さな子どもに興味があると先生に相談したところ、保育の道を進んだらいいのではと進められてこの世界に進みました。
今は、中学生の女子児童を担当しています。この年齢の子どもたちは、自身の持つ問題や課題に思春期が重なり、大変なことも多いです。また、ひとりひとり抱えている問題や課題が違うので、それに合わせた対応が必要となります。何年やっても「正解」が見つかりません。常に手さぐり状態で子どもたちに向き合っています。
なぜこんなに暴力的なの?なぜまわりの人とうまく関係が築けないの?と生きづらさを持つ子どもたちの周りにいる人たちは、自分の判断基準でものごとを考えがちです。そのため、わかば館に入っている子どもたちは誤解をされがちです。だからこそ、多くの人にこのような問題を抱える子どもたちもいるということや、社会的に理解されにくいことで困っている家族がいることも知ってほしいのです。
まれに、これが普通だと思っていたとお子さんの発達障害などに気が付いていない方もいらっしゃいますが、大変だけどまわりに相談できる環境がなく一人で抱え込んでいたという方も少なくありません。お子さんのことで悩んでいるご家族の方には、わたしたちのような施設によるサポートがあることも知ってほしいです。それをきっかけに多くの人に理解が広がればと思っています。
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左:子どもたちに人気のレゴ遊び。作品を見せてくれました。
中:館内に4つある遊戯室のうちの1つ。箱庭療法等を通じて、子どもの感情を読み取ります。
右:音楽療法室。部活動の一つである器楽演奏クラブのメンバーが年に数回の発表に向けて練習しています。

【取材後記】

今回ご訪問させていただいた中日青葉学園「わかば館」は児童心理治療施設ということで、それぞれ生きづらさを抱えた子どもたちが家庭や社会でスムーズな生活をおくるために治療生活をしています。
取材の時に伺った、自分が体験したことのない世界で生きている子どもたちを100%理解するのは難しいという言葉は、まさにその通りだと思いました。施設で働くみなさんはこのような葛藤を抱えながらも、子どもたちひとりひとりがどうすれば「生きやすくなるか」「その子らしく生活していけるか」を真剣に考え、子どもたちが社会で上手に生活をしていけるように、寄り添い、サポートをしています。
誰だって他の人に理解されにくい一面を持っているのではないでしょうか。この施設にいる子どもたちも普通の人より少しだけ怒った時に感情を制御できない、少しだけその場でゆっくりしていられないだけなのです。多くの人に、このような世界があることを知ってほしいと思いました。そして、少しでも理解が深まっていけば、子どもたちはもちろん、すべての人にとって、もっと生きやすい社会になるのではないかと感じました。

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※掲載されている情報は、2016年5月現在の情報となります。

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